目次: 寄稿編 No.1 伝統そして今 西島 安則

 京都大学ラグビー部の創立六十周年を記念し、意義深い式典が昭和五十七年九月二十三日の秋分の日に厳粛に挙行されました。そして、この機会に、ラグビー部の光栄ある歴史を回顧し、来たるべき新しい時代を展望し、京大ラグビーの活性化へへの思いをこめて、「京都大学ラグビー部六十年史」が編纂され、「記念室」を設置していただき、さらに、「京大ラグビーを強くする長期計画」が策定されました。六十周年記念実行委員会を中心にした京都大学ラグビー部OB会の皆々様の誠に有難い御尽力と暖い御支援に心より厚く御礼申し上げます。

 京大ラグビーの黎明期より六十有余年、この部史の中に活き活きと語られている京大ラグビー精神は、今日の、そして明日のラグビー部員の新たなる′沸る血潮′として受け継がれ、グランドに意気と熱として発揮されるものと信じます。

 輝かしい「伝統」の尊さは、それを「今」が如何に受けとめるかにあると思います。総て最初から出発して、鍛え磨いたすべてを出し尽くすことによって、はじめて「伝統」は「今」に受け継がれて行きます。

 京都大学ラグビー部がこの六十周年の記念式を迎える直ぐ前の九月十五日の慶応戦で、日野公嗣君は力を尽して戦い、ノーサイドの笛とともに倒れ、皆の祈りもむなしく、九月十九日ついに帰らぬ人となりました。部員の皆が、堪え難い悲しみと、言いようのない苦しみの中で、心深く誓い合ったときの事を忘れることはできません。京大ラグビーをこよなく愛した日野公嗣君の霊が、天からラグビー部の活き活きとした新たな出発を見守っていてくれます。

 現役の諸君、人生の最も素晴らしい時を、諸君は京大ラグビー部のメンバーとして、思いきり伸び伸びとラグビーを楽しんで欲しいと思います。そして、「今」が新たな「伝統」に加わるようなラグビー郡を創り上げて行くのです。

(前ラグビー部長)

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